上野さん(仮名)は28歳。いわゆる商工ローンと呼ばれる金融会社に3年間勤務していました。1990年代後半の当時はバブル崩壊のあおりを受け、銀行の貸し渋りが横行していました。商工ローン各社は、金策に困った中小企業に連帯保証人付きで高利で融資、貸した企業がつぶれると連帯保証人から取り立てるというビジネスモデルで急成長していました。融資当初から連帯保証人から取り立てることを想定していたのです。
上野さんは営業職として融資契約の取り付けから連帯保証人からの取り立てまでの一連の業務を担当していました。当時世間を騒がせたように、この取り立てには人道的とは言えないレベルの行為も多かったといいます。最初はその業務の新鮮さと高収入から楽しんで仕事をしていた上野さんも、徐々に良心の呵責を覚えるようになってきました。回収業務が上手く行けば行くほど不幸になる人が増え、上野さんの良心が痛むという状況に耐え兼ね、上野さんは転職を決意しました。
上野さんの今の仕事は企業情報データベースのセールスです。取引先の信用状況を把握する為のサポート情報を企業に提案し販売するのが上野さんの仕事です。与信管理(取引先の信用状況管理)という商品ジャンルになじみがあることから、上野さんは自信を持って営業活動を始めました。実際、商品である情報内容についての理解は早く、すぐに独り立ちして新規顧客獲得の為に1日何件も訪問して回りました。
行動力が持ち味でもあり、営業成績は悪くはなかったのですが、それでも中の下といったところでした。営業という仕事に自信を持っていた上野さんは、いつまでたってもトップクラス入りできない自分の成績にいら立ちを覚え始めました。徐々に自信を失いつつある中、上野さんは知り合いの紹介でコーチに出会いました。
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